シナリオライターにお仕事を頼むといくらかかる?シナリオライターの相場とは。現場の声を聞いてみた

シナリオライターの需要は昨今どんどん高まってきており、スマートフォンアプリではストーリーやキャラシナリオが重要視されてきました。これまでもストーリーの需要は高かったのですが、大手ゲームメーカー以外でもシナリオの品質をより求める傾向が強くなってきています。しかし、シナリオライターの相場についてはあまり知られていません。そこで、これまでの仕事で関わってきた現場の状況をまとめてみました。

シナリオライターの相場はいくらくらい?外注費用の考え方

過去にこのサイトでもシナリオライターの値段について記事化しましたが、現在もアクセス数が伸びています。それほどシナリオの値段についての情報が少ないという表れかもしれません。取材協力していただいたシナスタジアデザインさんはシナリオライターとしても実際に執筆しており、さらに発注者としても数多くのシナリオライターさんへお仕事を依頼してます。そこで、シナリオ作成で必要な費用についてまとめてみました。

■費用1 シナリオ作成のための準備

シナリオを書くために必要な情報にはこのようなものがあります。これらの資料を事前にまとめておけばシナリオライターさんの作業は大幅に減るため、費用の削減にも繋がります。世界観設定やキャラクター設定についてはゲームプランナーが作成することもありますし、シナリオライターの仕事と決まっているものでもありません。ただし、世界観の作成には知識が必要で、その世界の文化は何か、西暦何年頃のイメージか、国はどういう場所に位置しているのか、といった整合性を合わせていく作業にもっとも時間がかかります。

【世界観を作るために必要な情報】
1、どんな世界か(人間がいるのか、いないのか、魔法の世界やスチームパンクなど)
2、主人公は何者なのか
3、文明レベルはどのくらいか
4、その世界の文化はどんなものか

簡単に例をあげましたが、これだけを考えてもかなりの情報量になってきます。もちろん、依頼される方にはある程度映像としてイメージがあるものなのですが、設定の中には実際にシナリオ上の文章として出てこないものもたくさんあります。しかし、細かい設定がなければ主人公やその世界の人を喋らせることは困難です。良かれと思って書いたテキストが、後のストーリーに大きく矛盾してしまいシナリオが破綻してしまう可能性も出てくるからです。

■費用2 キャラクター設定

次にキャラクター設定です。キャラクター設定といっても、企画段階で決める程度の情報があればシナリオライターさんが味付けをしてくれます。無理に重厚なストーリーを持ったキャラクターが存在してしまうと、シナリオライターさんがその設定に振り回されて書きにくくなることもしばしば。キャラクターは世界観に一番深く影響してしまうので、事前に作成するのであれば世界観とズレが無いようにしていきましょう。
深く作らなくても、おおよその外観さえ決まっていればそこから膨らませることができるので問題ありません。

・キャラクターの名前
・喋り方、方言
・体格、身長、肌の色
・得意分野、趣味
・武器、武術など

ざっくりとしたイメージだけでも作っておけば時間と費用の節約になりますが、この段階から本格的にシナリオライターさんの作業が始まってきます。キャラクター設定もガッチリと作り込んでいる場合は別で、あとはシナリオを書くだけになってくるのですが、前段知識が無い状態でライティングを始めるので、何度か打ち合わせを行いイメージの共有をするのがおすすめです。

■費用3 シナリオプロット〜本執筆

世界観とキャラクター設定ができて、やっとシナリオ執筆です。でもその前に必要なのがプロットと呼ばれる設計図。シナリオ作成をする場合は必ずプロットを作って大まかな流れを確認しています。ここでスタートからゴールまでの道のりが繋がり、整合性が取れない部分があると修正になります。何度もプロットをやり取りして、そこでOKが出れば執筆開始。ここまで来てやっと多くの人がイメージするシナリオライターの作業が始まるのです。

多くは1文字いくら、という考え方で行われていたシナリオ費用ですが、現在はそうした縛りをやめていこうという考え方も出て来ました。そもそも1文字あたりの値段というのは過去の悪しき習慣であるという考え方もあり、大量の文章を書くゲームシナリオにおいては難しい部分です。これまで見ていただいたように、シナリオを作るためには多くの準備と時間が必要です。契約次第ではこれらの費用は発生しないこともあるので、本執筆の文字数だけで金額が決まってしまうとシナリオライターという職業を続けられなくなってしまう事も多くなってきます。

■シナリオの作成費用はいくらくらい?

費用の考え方としては、執筆の期間とボリューム、作業量によって変動していきます。弊社の場合は1文字単価ではなく、ボリュームに応じてライターさんと費用をご相談しています。費用については完全に交渉次第ではあるのですが、少ない費用であれば事前準備をしっかりとしてライターさんの負担をなるべく軽減するように努めています。

【メインシナリオの場合】※おおよそのイメージ
・世界観の作成 7~14日間
・キャラクター設定 3~14日間(登場キャラクターの人数による)
・プロット 3~7日間
・本執筆 7~20日間(ボリュームにより変動)
・修正対応 3~7日間(随時発生するのでおおよその期間)
合計 23~62日間

【ミニイベントシナリオの場合】※おおよそのイメージ
・世界観の作成 1~2日間(ストーリーが既存の世界観と違う場合)
・キャラクター設定 1~2日間(登場キャラクターの人数による)
・プロット 1~2日間
・本執筆 2~4日間(ボリュームにより変動)
・修正対応 1~3日間(随時発生するのでおおよその期間)
合計 6~13日間

キャラクターのフレーバーテキストの場合
・50パターン 5000円〜 +設定資料確認のための時間費用
・文字単価の場合は 1文字あたり1.5〜2円+設定資料確認のための時間費用

メインシナリオの場合
・5万文字程度 20万円〜 +設定資料確認のための時間費用
・文字単価の場合 1文字あたり2.5〜3.5円+設定資料作成費用

いずれも、いきなりテキストが書けるわけではありません。ゲームの設定を読み込む時間も必要ですし、場合によっては設定を新たに作らなければなりません。そうした執筆作業以外の時間についても費用を頂いています。これがないと完全に赤字です。

これだけの期間が必要なのに、1文字単価で仕事をしてしまうのは非常に危険です。作業時間と文字数を考えて発注する側も費用を決めなくてはいけません。1文字0.3円、3,000文字程度とかで募集している案件もたまに見かけますが、1日で終わるならまだしも、付随するキャラ設定や指示書の作成も入るともう赤字です。もちろん手の早い人であればもっと短期間で終わらせる事も可能ですので、ライターさんの執筆速度にも関係しています。
過去にキャラクター個別シナリオで1キャラ複数ストーリーを作成して2万円というお仕事を受けたことがありますが、実際に納品するまで1ヶ月以上かかったため割に合いませんでした。

最終的な期間についてはボリュームと作業量によって変わりますが、おおよそのイメージとしては上記のようになります。例えばサラリーマンが23日間働いた場合20万円以上の給料が発生しますよね。もし世界観やプロットの料金が発生せず、最終的な文字数だけで1文字単価の縛りで金額が決まるとしたらどうでしょうか。ゲームのメインストーリーで6万文字程度とした場合、1文字1円なら6万円、2円なら12万円です。修正文字数などは含まれないので、最後に提出した文章量で計算されてしまいます。1ヶ月10万円程度の給料だったら生活できないですよね?シナリオライターという職業はそういう存在として見られているのです。なので、できるだけ費用に関しては相談させていただいています。文字数というよりは作業量で見積もりをする場合が多いですね。

■シナリオライターが生き残るためには

最近ではクラウドソーシングでのシナリオ作成依頼も増えて来ています。シナリオライターを必要としている企業や、必要なんだけど探し方がわからない、という企業も実際のところ多いのが現状です。弊社でも営業をして獲得したシナリオのお仕事も多数ありますが、募集がかかっていたわけではなくて営業をかけた結果仕事が取れた、ということも少なくありません。ですので積極的に企業へアピールすることも重要かと思います。

過去に在籍していた企業でも多くのクリエイターから営業メールが来ていて、すぐに仕事は無いけどクリエイターとして社内のリストに加えておくことも行なっていました。弊社でも多くのクリエイターの方にメールを頂き、案件に応じてお仕事をお手伝いしていただいております。いざという時に「あの人に頼んでみよう」と思うためには、事前にクリエイターとして会社が認知していなければなりません。検索して探す事もありますが、一度メールでもいいのでやりとりしている方の方が頼みやすいですね。

また、知り合いの話で恐縮ですが、シナリオライターが何人か集まり集団として仕事をしています。1人でするより仲間と仕事をする事で、多種多様なジャンルにも対応できますし、急ぎの仕事や複数の案件を同時進行して実績を積み重ねられるメリットがあります。仲間を集めて起業するクリエイターも多く、1人ではなく複数人で仕事を取りに行くことも効果的だと思います。

さらに、日本国内ではなく海外のゲーム会社と仕事をしている人も多くなって来ました。特に中国企業からの仕事がかなり増えて行きている印象で、プログラミングやイラストは世界レベルなのに対して、ゲームシナリオの文化はまだ浅いため、日本のクリエイターの技術が非常に優遇されているとのこと。海外企業でも日本語ができたり、日本の担当を介している場合も少なく無いので、世界を相手に仕事をしてみるチャンスかもしれませんよ。

■まとめ

シナリオライターという職業は新しい物語を生み出す素晴らしい職業であるものの、まだまだ安く買い叩かれやすい職業でもあることが分かりました。実力勝負でもありますが、目指そうと思う業界が厳しい現状であれば続く若者が少なくなってしまうかもしれません。シナリオが重要視されている今こそ、シナリオライターという職業がさらに活躍できるタイミングなのかもしれません。

取材協力
シナスタジアデザイン合同会社

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