集英社ダッシュエックス文庫より、ライトノベル『ソシャゲライター クオリアちゃん』が発売されました。これまでほとんど存在していなかった「ソーシャルゲーム」のシナリオライターとはどんな職業かが分かる一冊となっており、現役シナリオライターはもちろん、これからシナリオライターを目指す人、アプリ開発者は必読です。
■ゲーム開発者は必ず読むべき業界ハウツー本
本作はソーシャルゲーム開発のうち、あまり表に出てこないシナリオライターを題材とした熱血創作ラブコメ作品。「チェインクロニクル」など多くのスマホアプリやソーシャルゲームでシナリオを手掛けてきた下村健氏によるライトノベルデビュー作となっています。
『ソシャゲライター クオリアちゃん』はライトノベルとして発売されていますが、業界の闇やシナリオライターの現状といった、かなりリアルな描写が特徴です。ゲーム開発でゲームシナリオはどのように作られているか、報酬金額はどのくらいか、そんな疑問がこの一冊で全て解決します。
シナリオライターという職業をきちんと理解している人はあまりいないかもしれませんが、いわゆる「コンシューマーゲーム」のシナリオと「ソーシャルゲーム(ケータイゲーム)」のシナリオは作り方が異なっていることをご存知でしょうか。ソーシャルゲームでは納期やシナリオの量、単価に関しても独特のものがあり、消費の速さも特徴的です。
ソシャゲライターに対するこれまでのイメージでは、
「ソーシャルゲームのシナリオは誰でも書ける」
「開発資金が無いから社員が必死に書いている」
「売れやすいモチーフを切り貼りしてオタク受けすればいい」
などのイメージを持つ人も多かった職業です。現在ではシナリオの重要度も上がってきており、近年リリースされているスマホアプリではシナリオに力を入れている作品も多くなってきました。有名作家を使う場合もあれば、無名でもリリース後に評価されていくものもあります。
ゲーム業界ではシナリオの重要性は増しているものの、それを作り上げるシナリオライターに関してはほとんど情報が無い状況が続いているという問題があるのです。
■評価が難しい「シナリオ」という成果物
シナリオはイラストと異なり、客観的に判断できる成果物が文章でしかなく、それを読む人によっても評価は異なります。しっかりとした職業として認知され、お金を稼ぐ事ができなければ志す人も少なく、評価されないものを量産することほど辛いものはありません。
ゲーム開発をモチーフにした作品は様々あり、これまでも『東京トイボックス』『ドラゴンクエストへの道』などの作品はありました。しかしこれらはプロデューサー、ゲームデザイナー目線のものなので、シナリオライターに特化した作品はほとんど存在していません。まして、ソーシャルゲームやスマホアプリといった歴史の浅い文化に関するハウツー本もほとんどありません。
本書では、そうしたシナリオライターの現実を「ライトノベル」という読み物に昇華しているので読みやすく、難しい専門用語が満載された業界感の羅列ではありません。楽しくフィクションとして読みながら、読み終わる頃にはシナリオライターの仕事が理解できる、そういった「なるには」本として、職業のハウツー本としての価値があるのも見どころです。
シナリオライター以外にも、ゲーム開発でシナリオを導入しようとしている企業の人、ディレクター、プロデューサーは知っておくべき現状がこの1冊に詰め込まれています。続編ではいったいどんな深い闇が登場するのか、開発者の視点からみても楽しみな作品です。
©下村健/集英社 イラスト:煎茶
・集英社 ダッシュエックス文庫
・ソシャゲライター クオリアちゃん特設サイト
・シナリオライター集団 Qualia(クオリア)
https://gamequalia.blog.fc2.com/